ちょっと時間が経ってしまいましたが、8月、出張にかこつけて(1泊増やして)美術館(とレトロ建築)巡りをしてきました。
今回、巡った美術展は以下の3つ。ついでに建物を観たかったところもありますが、それぞれおもしろい展示で充実した1日になりました。
- 国立西洋美術館「写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙」
- 東京都庭園美術館「生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界」
- 東京都美術館「デ・キリコ展」
●国立西洋美術館
内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙(2024/6/11〜8/25)
若い頃からまぁまぁ上野に行く機会があったのになぜか展示替えの休館期間中だったり、工事期間中で入館を拒まれていたような気がする国立西洋美術館。外からは何度も眺めてきましたが、今回、ようやく入れました。ル・コルビュジエの作品としていつか内部に入らないとと思っていたんです。
で、写本展です。随分、昔の話になりますが学生の頃の課題の参考にこの時代の写本の資料を見たことがあって、とても好きだったんですよね。特に楽譜が。建物見学だけなら常設展だけでもよかったんですけど、ちょうどタイミングよかったなぁと。
羊や子牛などの動物の皮を薄く加工して作った紙に人の手でテキストを筆写して製作される写本。印刷技術がまだない頃の中世ヨーロッパでは写本は聖書や聖歌集などを写し広めることで信仰を支えました。テキストを手書きで写していくので膨大な時間がかかるわけですが、単純なテキストだけでなく、中には差別化なのか書いた人の何かの主張なのか、華やかな彩飾も付けられ美術作品となっていったものもありました。
展示室に入ってすぐ、つい声が出てしまいました。
「小さっ! いや、小さすぎん? これ書いた人、米粒にも字書けそう」
そして、ルーペを持っていけばよかったなぁと思いました。この小ささは聖書が持ち歩ける小さなハンドブックだったからなんでしょう。順路を進むに従って大きなサイズの作品も出てくるのですが、彩飾も細かく、どんだけ器用なのと驚くばかりでした。もちろん美しくもあり。よいものを観られました。
「内藤コレクション」とありますが、筑波大学、茨城県立医療大学名誉教授の内藤裕史氏による写本零葉(本から切り離された一枚)を中心とするコレクションを寄贈されたものだそうです。
その後、常設展も巡って建物も(もちろん常設の作品も)満喫してきました。
(写本展も常設展も一部を除いて撮影OK)
●東京都庭園美術館
生誕140年 YUMEJI展 大正浪漫と新しい世界(2024/6/11〜8/25)
ドラマ「名建築で昼食を」に登場した東京都庭園美術館です。完全に建物目当てで行きましたが竹下夢二の作品が展示されているということで内部の撮影は一部を除いてNG。出張ついでに行けたのでとてもよかったのだけど、内部の写真が撮れなかったことだけが心残り…。必ずいつかリベンジします。
ちなみに現在、開催中の「建物公開2024 あかり、ともるとき(2024/9/14〜11/10)」は全面的に撮影OK。行きたい…。
と、まるで竹下夢二に興味がなさそうなことを書きましたが、とてもよかったですよ、YUMEJI展。夢二と言えば「大正浪漫」、そして細面な女性を描いた「美人画」のイメージですが、グラフィックデザイナーの草分け(当時の呼び方は図案家でしょうか)としても活躍し、本や雑誌の装丁、封筒や千代紙などの文具、小物のデザインを手がけていたんです。私個人としてはこのデザイナーとしての作品がとても好きで、これらの作品を観られたのがとてもよかったです。
夢二デザインの千代紙柄の箱に入った図録(レターブック付き)も素敵で帰りの荷物がちょっとかさばるなと思いつつ買ってきました。
●東京都美術館
デ・キリコ展(2024/4/27〜8/29)
こちらは是非とも観たかった展示(建物にはこれまで結構入ったことがある)。ただし、撮影NGだったので記録写真がありません。
不自然な遠近法や日常と見せかけて非日常な風景、人物の代わりにマヌカン(マネキン)を取り入れたりと後に「形而上絵画」と呼ばれるデ・キリコの不思議で印象的な絵が結構好きなんです。ちょいちょい、遠近法が狂ってて(もちろんわざと)展示作品を観ながらときどき「でかっ」とか「小さっ」とか思ってたのですが、特に伝統的な西洋絵画への技法に回帰する時期の作品でぱっと見、バロック期の絵画のような描き方なのに、人物が大きすぎたりするのがミスマッチというか、本来の楽しみ方ではないのかも知れませんがおかしくてクスってなってました。デ・キリコの作品をこんなにまとめて見たのは初めてでこちらも行けてよかったです。
※デ・キリコ展は現在、神戸市立博物館に巡回中です(2024/9/14〜12/8)。
今回の東京では美術館だけでなくレトロ建築巡りもしてきました。
今年いっぱいで休館が決まっている学士会館に宿泊し、重要文化財の自由学園明日館、旧岩崎邸庭園、明治生命館をはじめ、「名建築で昼食を」に登場したアンスティチュ・フランセ 東京、それからドラマ撮影(朝ドラ「虎に翼」も)にもよく使用される港区郷土歴史館などなど眼福な建物を見学できて本当に出張様様でした。またすぐにでも行きたいけどまたいつか。
(建物写真はインスタのレトロ建築アカウントの方にたっぷりポストしてます)
さて、9月に入って近隣の美術館でもおもしろい展示があり行ってきたのですが、またあらためて。
9月後半から大学の授業も始まっています。9月が終わると2024年は残り3ヶ月。2024年度は後半戦です。
本業もあわせてがんばります。がんばらないと。
最後にひっそり買ったもの報告。iPhone16pro、届きました。カバーを付けたら新規に付けられた「カメラコントロール」の物理ボタンが押しにくくて難儀してます。